2026年9月、Hibiki Path Advisors SPC(「私ども」又は「弊社」といいます。)は、主要投資先である藤倉コンポジット株式会社(証券コード5121、以下「当社」又は「藤倉コンポジット」といいます。)の小高工場及び原町工場の見学会に参加させていただきました。東日本大震災による被災を経て再び操業を開始した小高工場の歴史に思いを馳せながら、実際に現場を歩き、そこで働く皆様の姿を拝見したことで、決算資料や面談だけでは見えにくい当社の強みを肌で感じる貴重な一日となりました。
当日見学したのは、制御機器類、自動車部品等に使われる部品の工程、及びスポーツ用品製造工程となります。実際に歩いてみると、少量多品種の工程も多く、人の手と技能に支えられた、いわば「職人的」なものづくりの現場であることがわかりました。特にスポーツ用品では、当社が50年以上にわたり積み重ねてきた設計・製造のノウハウと、それを実際の製品へ落とし込む人の技術が、現在の競争力を形作っていることがよく分かります。製造のすぐ近くに評価機能があり、「作る、試す、また作る」というフィードバックを素早く回せることも、この事業の強さの一端なのでしょう。
図:ゴルフシャフトの試打をするロボット

私どもは日頃、スポーツ用品事業の高い収益性を数字として眺めていますが、今回その現場に立って改めて感じたのは、材料を選び、組み合わせて、巻いて、硬化し、研磨して、塗装する、という一見単純にも見える作業の中に、①自動化が困難な職人的ノウハウが存在し、②その作業こそが製品差別化の源泉である、という点です。長年蓄積されたプレイヤーの打撃データと組み合わされ、改善改良を日々加えてきたその気の遠くなる道のりの長さこそが顧客から高い評価を獲得するFUJIKURAブランド力の源泉となっていることを思い知る機会となりました。
難易度の高い40g以下のシャフトでは、巻き工程のマイスターという技能認定制度を設け、若い世代への技術承継も進められています。自動化・DXにも挑戦されていますが、一見すると機械に任せられそうな工程も、実際には品質の良否をどこで線引きするかを含め、相当に奥が深く、現場の方から「道のりは長い」と率直なお話があったことも印象的でした。世代を超えて技術継承する仕組みを作り、機械に任せられるところは機械に任せる。その地道な積み重ねを日々繰り返し製品力と技術力、そしてコスト競争力を常に磨いていることが良くわかりました。
私どもは「藤倉コンポジット 26/3期決算(ゴルフシャフトの成長戦略がわかる!)」において、スポーツ用品事業について、当社がOEMメーカーから自ら顧客接点を持つブランドオーナーへと進化し、高収益なCUSTOM・アフターマーケットにおけるブランド力、価格決定力、そして顧客からのフィードバックを商品開発へ還流させる仕組みを確立したことが、今の成功に繋がっているのではないかと申し上げました。今回工場を見学し、日本を生産技術の源泉とし、そこで磨いた技術を海外生産へ展開して収益性を高めていく役割分担も明確であり、海外拠点にもなお稼働余地があり、今後の更なる成長に向けた土台は整っているように感じました。
同時に、今回の見学で私どもの期待が一段と高まったのが、半導体関連を中心とする制御機器分野です。特に除振台等については、当社が長年培ってきた独自の設計・加工技術がお客様から評価され、それが実際の事業につながってきた経緯を伺い、「藤倉コンポジットだからこそ」という勝ち筋が見えてきています。半導体の微細化と製造機器の大型化に伴い、要求される設計と性能の難易度が高まっており、当社ならではの技術が活かせる領域が拡大し、引き合いも増えている模様です。尚、2025年3月期の大型の設備投資によって新設された製造スペースには、まだ十分な余裕があり、将来の受注増への強い自信を伺わせます。株主として大いに期待したい部分です。
一方で、工業用品をはじめとするその他の産業用事業については、今後どのように「藤倉コンポジットらしさ」を磨いていくかが一つの鍵になるように感じます。当社が長年培ってきた様々な素材の加工及び複合化技術を様々な用途へ展開しようと、現場の皆様が試行錯誤されていることがよく伝わってきましたが、肝心の顧客にその「らしさ」が正当に評価されてこそ初めて事業自体の拡大再生産が可能な超過利潤に結び付きます。今ある技術蓄積と、選択しうる事業領域の組み合わせの中で「誰にも負けない」という分野を機微に見立て育てていくことができれば、既に強いスポーツ用品と成長の確度が高まりつつある半導体関連に続く、新たな柱も見えてくるのではないかと期待しています。当社の現場力が日本の多くの製造業に対しても全く見劣りしない、非常に強いものであることに今回の見学を通じて確信を持ったと同時に、この現場力を生かし競争に勝つ事業ポートフォリオを形成し成長させることが、まさに企業経営の責務なのだと改めて感じる次第です。経営陣の皆様には、じっくり待ち育てると同時に、引くべきところでは引く見極めを通じて、未来の企業価値を見据えた「決める覚悟」を持ち続けていただくことを期待しています。
今回の見学会には私どもを含め約10社の投資家から20名弱が参加し、盛況な会となりました。見学中も各事業のご担当者や帯同された取締役に参加者から矢継ぎ早に質問が寄せられ、設備投資、人材、各事業の競争力や今後の成長について、会社側と投資家との間で活発な議論が続きました。私どもが2024年に寄稿した「『同意なき買収』時代における上場の意義」において、上場の本質的な意義の一つは、資本市場を味方につけることにあると申し上げました。企業の本質は、社会からの評価を頂き、それを利潤と企業価値(≒時価総額)に転換することです。そしてその過程に当然ながら従業員の幸せも存在します。社会からの評価は、それこそ①顧客からの評価は超過利潤(≒利益)に転換され、②株主からの評価は企業価値(≒時価総額)に転換されます。今回の工場見学会によって、普段見ることが出来ない当社の顧客からの評価の原点を見ることが出来、株主としては貴重な機会となりました。このような、普段のIR業務を超えた活動は、企業の皆様にとっては骨が折れる作業でもありますが、企業価値を鑑みた場合には非常に大切であり、会社と資本市場との健全な関係とは何かを考えるうえでも、大変示唆に富む機会であったように思います。
現場の皆様が長い時間をかけて築いてこられた技術と企業文化に最大限の敬意を払いながら、私どもも「親しくも、厳しい友人」として、藤倉コンポジットのさらなる成長と企業価値向上をこれからも応援してまいりたいと思います。
以上
(過去の関連する投稿)
2026年7月6日 - 藤倉コンポジット 構造改革と資本政策の道筋
2026年6月17日 ー 藤倉コンポジット 26/3期決算(ゴルフシャフトの成長戦略がわかる!)
2026年6月10日 ー 藤倉コンポジット 大量保有に関わる変更報告書提出と会社紹介資料公表について
2026年4月2日 ― 藤倉コンポジット株式会社 大量保有に関わる変更報告書の提出について
2026年1月26日 ― 藤倉コンポジット株式会社 大量保有報告書提出について
2025年12月26日 ― 藤倉コンポジット株式会社 自己株取得の発表について
2025年12月5日 ― 藤倉コンポジット株式会社 2Q決算説明会コメント
2025年11月14日 ― 藤倉コンポジット株式会社 企業価値向上施策ご提言書の送付について
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