ひびき・パース・アドバイザーズ(以下、「私ども」または「ひびき」といいます。)と投資一任契約を締結しているひびき・パース・バリュー・ファンド(以下、「HPVF」といいます。)は、4月20日、コア投資先の一社である株式会社きんでん(以下、「きんでん」または「当社」といいます。)に対し株主提案書を送付し、受理されました。そして、5月20日、当社より、本提案内容が、取締役会の「反対意見」と共に公開されました。そこで、HPVFの提案書を本投稿の下に添付をするとともに、株主提案に至った経緯をご説明します。
また、私どもは、かねてより当社に対してエンゲージメント活動を行っており、昨年10月には「企業価値向上施策ご提言書」を取締役会に送付するとともに「説明動画」を通じて、私どもの提言の概要を公開しておりますので、当社の企業価値向上を応援されている株主の皆様にはぜひご覧いただきたく存じます。
当社は国内の電気設備工事業界を代表するトップ企業としてミッションクリティカルなプロジェクトを数多く請け負いながら、一貫して業界随一の利益率をあげられております。私どもは、当社のこれまでのこのような素晴らしい実績のみならず、再生可能エネルギー時代を担う中心企業として、将来のさらなる成長への期待を持って当社に投資をさせていただいております。
しかし、当社は、そういった抜群の事業を誇る中、過去3年の平均ROE1が5.5%と業界平均7.9%2を下回っております。これには当社のバランスシート・マネジメントに課題があると私どもは考えております。
最新の2024/3期度末で当社が有する短期及び長期の有価証券等は、総資産の約36%、純資産合計の51%に及ぶ約2,904 億円に上ります3。また、前年の2023年3月末時点において、当社の政策保有株式の大半は一方的に当社のみが株式を保有するものである4上に、当社は、116種類の多種多様な債券(残高465億円)を保有しており、さらには1,400億円程度の資金が投資有価証券の括りで譲渡性預金となっております。
債券や譲渡性預金での資金運用は否定されるものではありませんが、2023/3期において総資産の約25%を、利回りが極めて低く、資本コストに全く見合わない他社の債券及び譲渡性預金によって運用していることは、現在のコーポレートガバナンスの原則からすると許容し難いと私どもは感じております。2022年の全国保証株式会社宛てレター内p.18でも記載をさせていただいております通り、このような運用は株主価値の大きな棄損につながっているものと考えます。
以上のような影響もあってか、当社株式の市場価格は、依然として私どもの提言書内でお示しした(私どもの考える)理論的な株式価値を大きく下回っている状況にあります。私どもは、当社にはROEの本質的な改善が必要であり、それには投資有価証券及びそれとセットとなる純資産の意図した圧縮が必須であると考えております。
そこで、計画的で、着実なるROE水準の向上に向けて、HPVFは年間1株あたりの定額配当金106円を求める株主提案をいたしました。また、この年間配当金106円の定額配当を少なくとも10年は継続し、当社のROEの継続的な改善を図ることについても強くお願いをしております。なお、このような配当政策を実施した上でも当社の財務健全性に悪影響を及ぼさないことに関しては、先述の提言書のp.6に詳細な分析をさせていただいている通りです。
私どもは、当社がより積極的な財務・資本政策を施し、企業価値の最大化に向けて邁進していただくことに、高い期待を抱いております。しかしながら、取締役会の反対意見に述べられているように当社の現状の資本政策である総還元性向50~60%を継続した場合、ROEの計算式5の分母となる株主資本は増え続け、ROEの継続的な改善を実現することは、その株主資本の増加を“上回るペース”での当期利益の継続的な増加が前提となり、難易度が高いと言えます。ROEを高める施策という意味で、純資産をコントロールする私どもの提案の合理性は高いと考えております。
つきましては、当社の資本効率と株式評価の大幅な向上に向けまして、こうした提案を行うことにより広く株主の皆様にもお問いかけをさせていただきたく存じます。当社の本質的な企業価値向上を応援する株主の皆様のフェアなご判断を頂きたく、宜しくお願い申し上げます。
1 Hibiki Path Advisors計算(年平均せずに年度末ごとによる計算)
2 同業他社47社を選定し、Bloombergより各社過去3年間平均ROEの単純平均値を計算(2024年5月時点)
3 2024/3期当社決算短信より
4 第109期有価証券報告書p.42~p.49(2024/3期がまだ有価証券報告書が提出される前のため前年にて代用)
5 当期利益 ÷ 純資産
なお、今回の資料等の公開については、特定の有価証券の取得の申込みの勧誘若しくは売買の推奨又は投資、法務、税務、会計その他いかなる事項に関する助言を行うものではありません。