- 2024-6-16
- TBSホールディングス, エンゲージメント, きんでん, 日本高純度化学
ひびき・パース・アドバイザーズ(以下、「私ども」または「ひびき」といいます。)と投資一任契約を締結しているひびき・パース・バリュー・ファンド(以下、「HPVF」といいます。)は、今年6月に株主総会が開催される3社に対して株主提案を行い、その3社全て発行体の取締役会から反対意見が表明されましたが、大手議決権助言会社であるインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(以下、「ISS」)はこの3社に対する私どもの4提案全てに対して賛同推奨を公開されました。ここにご報告を申し上げると共に、皆様株主におかれましても企業価値最大化のために何が適切か、慎重にご判断をいただきたく改めて内容に関して簡単にご説明をさせていただきます。
先ず、私どもが株主提案を行ったのは、株式会社きんでん(以下、「きんでん」)、株式会社TBSホールディングス(以下、「TBS」)、そして日本高純度化学株式会社(以下、会社英語名から「JPC」)の3社です。3社は全く違う業種に属しますが、私どもは、株主としてその事業の本質的な強みには、確信を持っており、より一層事業面においては成長されていくと、ワクワクとした期待感を抱いております。しかし、残念ながら財務面においては3社とも実は全く同じ問題を抱えております。それは、今の資本政策のままでは業績が好調に推移し、利益が増加してもROEが改善しにくい、つまりPBRも上昇しにくい、ということです。
以下の図をご覧ください。
すぐお気づきいただける点は、現金と有価証券の合計を見ると、きんでんでは総資産の40%あり、さらにTBSとJPCについては総資産のなんと72%と87%に及びます。
それは、①当社の株式を購入した株主にとって、当社とは関係のない他社の事業リスクとなる、市場性のある有価証券を多額に所有し、②そのためバランスシートが膨れ、自己資本比率も70%~84%と極めて高くなり、③結果として、3社ともROEが大体4~6%と極めて低い、という問題を抱えております。
私どもが、昨年発表しました6つの提言レターにあります通り、持合いは日本の資本主義発展における歴史の産物であり、その過去は完全に否定されるものではないとはいえ、今後の日本企業の活性化や市場全体の魅力を高めていく上では、残念ながらガバナンスの足かせとなる状態であり、既に議決権助言会社大手2社は政策保有株式が多い企業の経営トップの再任には反対推奨をすることを明示しております。
そこで、私どもの株主提案は3社ともに、ROEの持続的な改善のために、自己資本(純資産と同義)をコントロールしましょう、という提案です。当然ながら、そのバランスシートの反対側で、そういった有価証券の売却を想定しています。次の図がその内容です(※実際にクリック出来る資料は本投稿下部にリンクを添付しております)。
(出所:Hibiki作成)
3社共に私どもの基本姿勢としては、極めて純粋に、以下の素朴な疑問点から来ております。
- 皆様(投資先)の先人から受け継がれた過去の利益による潤沢な内部留保により、必要以上に安定化したバランスシートにメスを入れず、利益成長だけでROEを改善していけるのですか?
- もし、例えば、ROEが6%として配当性向が50%としたら、ROEの分母である自己資本が毎年3%ずつ増えますが、当期利益は「複利で」3%ずつ以上増やせますか?
- ちなみに、3%を複利で増やして10年だとすると、合計34%ですので、当期利益が10年後34%増えても当然分母も同様に増えているので「ROEは現在と同じ」となります。ROEを現在の1.5倍とする場合、1.34 x 1.5で当期利益は「2倍」必要です。極めて簡単な算数ですが、この利益成長は可能ですか?その計画を見せていただけますか?10年後に経営に携わっていそうな人にこそコミットを頂きたいです。
- これは単純化したケースですが10年後に利益を2倍にする計画をベースにROEを改善しますと今の投資家に提示できますか?
簡単な数値例ですが、このような素朴な疑問点がある上での株主提案となっております。利益成長とその努力に関しては私ども株主として取締役会や従業員の皆様に現状では全面的に委託をしております。しかしながら、取締役会の皆様には、ROEの「分母」である自己資本に関しては、株主との対話において熟慮した上で決定していただきたい、と切実に願っています。
今回残念ながら、3社全ての取締役会には反対をいただきましたが、敢えて3社の取締役会にお伺いしたいのは、「それでどのようにROEを持続的に改善していくのかについて合理的な計画があるのですか」ということです。ISSはその点で、発行体の説明が不十分と認識されたのではないか、と推測しております。
改めてとなりますが、皆様株主におかれましても企業価値最大化のために何が適切か、慎重にご判断をいただきたく、よろしくお願いを申し上げます。日本の企業活動、及び資本市場の活性化の行く先は、皆様の議決権の行使に依拠しているのではないかと私どもは感じております。宜しくお願いいたします!
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