Hibiki Path Advisors(以下、「私ども」といいます。)は、投資先の一社である株式会社巴コーポレーション(以下、「当社」といいます。)に対し、当社株主の共同利益を確保するべく、株主提案を実施しております。本提案に対して、発行体の取締役会からは全2議案への反対意見が表明されましたが、大手議決権助言会社であるインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(以下、「ISS」)は、私どもが提案する2議案の内、以下の通り、第5号議案に関して、賛同の推奨を公開しています。また、反対する第4号議案については、私どもとして保守的と考える計算に基づく希薄化を要因とするものであり、本質的な意義等を否定するものではないと考えています。
議案の詳細は、当社発行の定時株主総会招集ご通知をご参照ください。
図1:私どもの株主提案に対するISS推奨
※ISSの推奨理由に基づきHibikiの理解で纏めた内容、政策保有株式の純資産比率は2024年3月末基準
(出所:Hibiki作成)
私どもが考える今回のISSによる推奨表明のポイントは、以下2点であると考えています。
①当社が「普通ではない高い水準 (Unusually High level)でのキャッシュ」や、「純資産の58.2%¹に及ぶ政策保有株式(ISS基準は20%)」を有していることを、推奨の根拠にしていること
②低資本効率、低い市場評価を踏まえ、株主還元がネットキャッシュと長期投資の18.3%²程度となるDOE10%は妥当と評価している点
図2:当社の余剰資産の状況
※投資有価証券、純資産、総資産は当社25/3期決算短信(修正版)の数値を採用
(出所:Hibiki作成)
反対推奨とされた第4号議案 取締役(監査等委員である取締役及び社外取締役を除く。)に対する譲渡制限付株式の割当てのための報酬支給の件についてですが、その理由は希薄化の水準が大きいことであり、私どもの提案の本質的な意義自体が否定されたものではないと考えています。私どもとしては、単年度の希薄化は0.7%程度(25/3期時点)と限定的であり、ISSが計算の前提とする10年間最大限の発行を行う場合の希薄化率6.4%を判断の根拠とするのは保守的に過ぎるのではとの立場です。
尚、私どもの株主提案以外の会社側提案に関して、ISSは第2号議案 候補者番号1 深沢隆現代表取締役社長 社長執行役員の再任に反対を推奨しており、私どももその見解に賛同し、再任に反対を表明致します。ISSの深沢代表取締役への反対推奨の理由は、当社の資本配分の失敗となっておりますが、私どもは従前から主張している通り、当社の資本配分とその結果としてのROEに対する目標設定や実現に向けたコミットメントについては、極めて大きな課題意識を持っております。
図2で示している通り、当社は多額の現預金と投資有価証券(主に政策保有株式)を有しており、それによってPBRは1倍を下回っているにもかかわらず、当社は2025年5月30日、「第3期中期経営計画『TOMOE BUILD up 5』修正に関するお知らせ」を公表し、ROE目標を当初計画の10%から5%へと大幅に引き下げております。また、その理由として、詳細は「弊社HP」に掲載しておりますが、賃貸不動産を主力とする関連会社の連結子会社化により、利益を上回るペースで純資産が増加したことであると説明をされています。この点、従前から明白であった過剰な純資産への対策を一切講じることなく、連結を理由に安易にROE目標を引き下げた点については、株主共同の利益の観点から当社経営陣のROE目標達成に対する姿勢に重大な懸念を感じており、極めて遺憾です。
尚、私どもとしては、株主提案を実施して以降も、適切な議決権行使を検討することを目指して、継続的に建設的な対話を要請する立場をとり、2025年6月6日、中計や資本政策を主導されてきたと考えられる、深沢代表取締役、三木取締役(本社部門長)との面談を要請しましたが、当社からは「面談は事務局で行う事となっている」との回答により面談は拒絶され、極めて遺憾に感じております。
私どもが先日投稿しました「日本人の法意識 ― 株主の権利を2つのレンズからみる ―」にて、弊社代表がコメントさせていただいております通り、会社は本質的には株主を選ぶことが出来ず、株主から株主提案が提起されるということはその前段としてのそもそものきっかけや系譜が会社側(経営側)にあることが大半です。当社もまさにそういった状況にあるかと存じます。こういった、企業価値改善につながると考えられる建設的で本質的な株主からの問いかけに納得ができない場合、経営者は少数親密株主の下で自社の経営に集中することが可能となる非公開化を選択すべきと考えます。
改めてとなりますが、株主の皆様には、企業価値最大化のために何が適切か、冷静なご判断をいただきたく、よろしくお願いを申し上げます。日本の企業活動、及び資本市場の活性化の行く先は、皆様の議決権の行使に依拠しているのではないかと私どもは感じております。
¹2024年3月末基準
²当社25/3期決算短信(修正版)
(過去の関連する投稿)
日本人の法意識 ― 株主の権利を2つのレンズからみる ―
2025年6月5日 ー 株式会社巴コーポレーション 中期経営計画修正に対するコメント
2025年5月29日 ー 株式会社巴コーポレーション 株主提案について
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