2023年6月16日 ー 株式会社日本取引所グループ 株主総会について

ひびき・パース・アドバイザーズ(以下、「ひびき」)の清水雄也CIOはは6月16日、株式会社日本取引所グループ(証券コード8697、以下「JPX社」)の定時株主総会に株主として出席致しました。

ひびきは、昨年7月に公開書簡をJPX傘下の株式会社東京証券取引所(以下、「東証」)に送付以降、東証の幹部の皆様と何度か意見交換の面談を重ねて参りましたが、今年の1月30日に東証から発表された上場企業に対する株価への意識を高める「論点整理を踏まえた今後の東証の対応」の内容に、強く感銘を受け、その方向性を応援する意味も込めてJPX社の株主となりました。

東証はその後も、3月31日、4月25日と詳細なる追加資料(1)を発表して、同社が「本気」であることを市場に指し示し、多くの上場企業の経営者に衝撃を与えております。今まで、アクティビストであろうとなかろうと、多くの株主が投資先に「株価を意識した経営をしてほしい」という切実な訴えかけをしてきましたが、企業からは「株価は市場が決めるのです」という半ば他人事のような回答が多かったのですが、そのような姿勢はもはや許容されないものになりつつあります。

(1) 市場区分の見直しに関するフォローアップ会議

今回のJPX社の株主総会でひびきの清水からは以下のように質問をさせていただきました(要約):

PBR1倍問題という日本市場の通奏低音的にずっと流れ続けてきたものに正面から切り込み、資本コストや株価を意識した経営を促すよう上場企業に通達されたことにはエンゲージメント投資家として大変強い勇気を頂き感銘を受けた。市場も好感しており、外国人投資家も今までにないような熱気をもって日本市場を眺めている。しかし、これはある意味デジャブでもある。故安倍元首相によるアベノミクスで日本が注目され一時外国人が30兆円以上日本の株式を購入したが、その後7-8年をかけてほぼ全部売ってしまった。今はある意味お祭り騒ぎにあるが、自社株買いや配当を増やすなど一時的、表面的な対応も目立つ。これは日本の復活の最後のチャンスではないか、と感じるが、この流れを一過性のものとして終わらせずに、日本企業全体をより構造的に資本収益性の高い、収益性の高い状態に持っていくための強い、そして継続的な、施策が必要であると感じる。東証として、JPX社として今後追加的にどのような施策を検討しているのか、山道CEOご自身のお言葉で頂戴したい。

山道CEOからは以下のようにご回答いただきました(要約):

この1月の発表以降、様々な意見を頂戴し、投資家や発行体とも対話をしている。そして追加的な発表資料でも述べているが、仰る通り、単なる自社株買いや配当を増やすといった対応が現時点では目立っている。私どもとしても企業が資本コストを正しく認識して、その上で資本収益性を高めて、株価を意識した経営をすることが大切なことであると考えており、今後の動向を注視していきたい。尚、企業への通達を3-4月に終え、7月には回答が出そろい、さらにガバナンス報告書などにも様々な記載がなされていくと思うのでそれを集計、分析して、どのような施策やアドバイスが出来るのか、検討をしていきたいと考えている。

このように、東証自身としても、この一連の流れを、一過性のもので終わらせないよう、企業の回答の内容を詳細に分析を行いながら何等かの追加的な施策を講じていくという力強い意思表明のような形でのご回答をいただけました。私ども、一投資家としてもそういった動きを意味のあるものにすべく、投資先との建設的な対話を継続していきたいと存じます。

企業が「資本コストを意識した良い経営をして」「株価が上昇し」「従業員の給与や持ち株の資産価値が上がり」「株主の資産価値も上がり」「国富が増加する」ここまでの大きいサイクルを一企業や一個人として意識することは難しいかもしれませんが、一人ひとりが本気を出せば、「神の見えざる手」によって全体のエコシステムが活性化し、全体の富が増加することは間違いないです。ただ、その中で実は最も「冷や汗」をかくのは、「前例踏襲主義」で「リスクを取らず」、「中途半端な経営」を続けてきた凡庸な経営者の方々なのではないでしょうか。収益性も上げられず、従業員の給与も上げられず、投資もせずに、ただ現金や不動産を会社にため込み、PBR1倍未満でなるべく目立たないようにしてきた一部の経営者があぶりだされる状態になろうかと思います。

また、別の株主の質問の回答で、山道CEOは「今取引所は世界の投資資金の争奪戦を演じており、これに日本が打ち勝たないといけない」と述べておられました。その通りであると思います。そのためには、取引所としての安定性、利便性は勿論ですが、そこに上場する企業の活性化は不可欠です。

「流水不垢 戸枢不腐」(流れる水は腐らず)

中国の呂氏春秋に書かれたこの言葉、まさに今後の日本資本市場の復活を象徴するものとなってほしいと切に願っております。


本投稿は、特定の有価証券の取得の申込みの勧誘若しくは売買の推奨又は投資、法務、税務、会計その他いかなる事項に関する助言を行うものではありません。

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