ひびき・パース・アドバイザーズ(以下、「ひびき」または「私ども」)は、2024年6月25日に開催された株式会社きんでん(以下、「きんでん」)の第110回株主総会(以下、「本株主総会」)にて剰余金処分(増配)についての株主提案を行いました。本議案は第4号議案となっております(私どもの具体的な提案内容に関してこちらをご覧ください)。
6月27日にきんでんより提出された臨時報告書によると、第4号議案に対し、26.7%の賛同を得ることが出来ました。私どもの株主提案に賛同をいただきました多くの株主の皆様には心より感謝申し上げます。有難うございました。誠に残念ながら同議案は否決となりましたが、相応の数の株主の皆様にご賛同いただいた結果を見ると、きんでん取締役会に対しては株主による「ROEの改善に対するさらに強いコミットメントを求める」とのメッセージが提示された形になったと私どもは感じております。
東洋経済新報社、会社四季報2024年夏号における上位30株主のうち、きんでんの関係者あるいは持合い関係株主だと推測される株主らの議決権合計約86.4万個を計算から除外した場合¹、第4号議案は一般の個人株主や機関投資家株主等の約52%の賛同を得た計算となります。これは、持合い関係に左右されない一般株主等が、きんでんの資本政策につき、さらに踏み込んだ施策を求めていることの表れだと考えられます。
また、本株主総会における土井会長及び上坂社長の経営トップ2人の取締役再任議案については賛成割合が80%を割り込んでおります。土井会長の取締役再任議案について、先述のように会社関係者や持合い関係株主を除いて計算した場合²、一般の個人株主や機関投資家株主等による賛成割合は56%を下回っており、昨年に引き続き、一般株主及び機関投資家株主等の相当数が再任に対して反対していることを表します。
上記の計算からも分かる通り、きんでん社においては会社関係者や持合い関係株主が占める割合が大きく、これらの株主が、現経営陣の再任議案や現経営陣が提案する剰余金配当議案に無批判であることにより、きんでん社のガバナンスが歪められています。本来はプリンシパルである株主のために考え、行動するエージェントたるべき経営陣が、そのような経営陣に忖度する会社関係者・持合い株主によって甘やかされる事態は、残念ながらきんでん社の未来を暗くします。きんでん社の中長期に亘る規律ある成長・発展には、持合い関係株主等の縮減が必要条件と考えます。
「政策保有株式」の名の下に、その保有の合理性が検証されることなく、実質的には持合い等が継続されている現実に、近時、あらためて警鐘が鳴らされています。持合い関係株主等の割合が大きいきんでん社は、日本の資本市場がグローバル化の中で目指している道筋から「落ちこぼれている」と言われても仕方がありません。
また、2023年3月31日以降、東証により、資本コストや株価を意識した経営が一貫して要請されているところ、きんでん社においては、同社が政策保有株式を保有することに加え、上述のように持合い関係株主等の割合が大きいことで経営への規律が緩んでいることにより、経営資源が効率的に配分されていないものと考えられます。結果として、私どもの提案した資本政策に関する議案(増配の議案)に、一般株主や機関投資家株主等の支持が集まったものと考えます。
きんでん社は本年1月に「中期経営計画における成長投資と企業価値向上への取り組みについて」を発表され、成長戦略と共に、株主還元の強化をお示しいただいたものの、本計画においてROEにつき数値を伴った目標提示がなく、過剰資本状態にあるバランスシートの抜本改革に関する言及もございませんでした。きんでん社におけるこのような計画の発表は、同社が投資家の目線を十分に意識した経営を行っていないことを裏付けるものと考えます。この点につき多くの株主が課題と認識しており、経営トップの信任率の改善には、持合い関係株主等以外の株主の意見も取り入れつつ本質的なバランスシートマネジメント等に向き合うことが求められると私どもは感じております。
私どもは、きんでん社の事業成長の方向性については引き続き応援しつつも、同社取締役会に対しては、バランスシートに対する抜本的な改革案の提示やROEなど定量的な目標設定のある中期経営計画の再設定を強く求めていきたいと存じます。
¹ 会社関係者及び政策保有相手は株主提案に反対したと仮定しています。
² 会社関係者及び政策保有相手は土井取締役再任に賛成したと仮定しています。
過去の当社へのエンゲージメントは、下記リンク先資料及び動画をご覧ください。
2024年6月16日 ー ひびきの株主提案にISS推奨表明
2024年5月20日 ー 株式会社きんでん 株主提案について
2023年10月14日 ー 株式会社きんでん 提言書送付 説明動画について
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