2026年6月24日 – 河合楽器製作所 欧州の状況について

2026年6月、Hibiki Path Advisors SPC(「私ども」又は「弊社」といいます。)は、2023年以来の主要投資先である株式会社河合楽器製作所(証券コード 7952、以下「当社」又は「KAWAI」といいます。)の世界戦略遂行の重要な最前線と言える、欧州全域を司る、Kawai Europa GmbHの髙田憲和社長に現在の施策とその進捗についてお話をお伺いする機会をいただきました。KAWAIの皆様の許可をいただき、ここにコメントさせていただきます。

今回の投稿では、①「KAWAI十年の計」のおさらいとKAWAIにとって欧州市場の持つ意味について先ず解説させていただき、次に、②欧州市場の独特の特徴と現状、最後に、③今実行中のKAWAIの戦略、と3部構成で進めさせていただきます。

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先ず、①「KAWAI十年の計」です。昨年3月に発表され、私どもも、直後にその評価についてコメントをさせていただきました。今までのKAWAIの経営理念とミッションを根底から刷新し、世界一の鍵盤楽器メーカーとなるべく、野心的な長期の計画と評価しています。

(出所:KAWAI十年の計スライドより)

本計画が発表された昨年3月時点では、双減政策の変更等による中国ピアノ市場の収縮の余波が続いており、長い時間軸でもって提示された本計画の実現性に懐疑的な見方もあったことは事実です。ただ、本来的に比較的安定的に需要が拡大していく特徴を持つ音楽レジャー市場において、世界横断的にブランド価値向上を追求する覚悟を持った戦略と戦術が着実に実践された場合には、この計画目標の達成可能性につき私どもは強い期待を持っております。

そして、ここから本題となりますが、中国市場が縮小した後、KAWAIの25/3期と26/3期共に鍵盤楽器売上の30%を占める、売上ベースで最大市場が、欧州であり、この中計の実現性を計る上においても極めて重要な位置づけとなっています(下図)。この十年の計の設計図を河合社長と共に描いた、前経営戦略部長であった髙田氏が、自らその計画達成のため欧州事業責任者として赴任されたのです。

(出所:KAWAI十年の計スライドより)

次に、②欧州市場の独特の特徴と現状、についてです。

今回の面談で興味深い示唆をいただいたのは、ピアノを含む楽器購入エコシステムが欧州と日本で全く異なるという点です。それによって当然マーケティング戦略も異なってきます。欧州、特に大陸側(フランス・ドイツ・ベネルクス)は、音楽が歴史的にも国民生活に深く根付いているところから、どの町にもいわゆる公的な環境に音楽教育機関が多く存在しています。そのレベルは音楽専門学校(コンセルヴァトワール)から地域の区民会館の音楽教室のようなものまで様々ですが、音楽が日常に存在するからこそ、その教育環境も日本人からは想像が出来ない程に「公共性」が強くなっている模様です。皆様もご存じの通り、日本において、特に幼少期では、主として(近所の)個人の先生の下で音楽教育を始めるのが特徴で、その先生(業界用語でレスナー)を通じて楽器の購入の紹介がなされるルートがメインとなります。欧州ではそれがそもそも最初から最後まで公的な機関(所属する先生も、立場としては公務員)を通じたものになるのです。

つまり、欧州は幼少期からの音楽教育システム自体が日本より構造的に確立されており、土台から頂点まで厚みもあることによって、楽器販売マーケティング上で特定すべき購入者のペルソナにも、そのカスタマージャーニーの想定にも、日本と全く違ったアプローチが求められるということです。そのような環境下、KAWAIがどのようなアプローチを取っているかについては次の③で解説をさせていただきます。

尚、髙田氏曰く、今年の欧州の音楽市場は、ウクライナ戦禍の長期化と、中東情勢悪化により、景気及び消費マインドが悪化しているだけでなく、各国の防衛予算が上振れしている中で、文化的分野に対する予算縮小が相次いでおり、事業環境としては決して楽観できない状態だということでしたが、そのような中でもKAWAIの欧州事業全体としては、先にご紹介したマーケティング上の施策の効果の上に、商流の統合など業務管理や価格管理面での改善効果もあり、現時点では、開示されている資料の通り今年度通年の当初予算を達成させる自信を持っていると、力強いコメントを頂きました。

最後に、③今実行中のKAWAIの戦略、についてです。

先述の通り、欧州の楽器販売の鍵となるのが公共音楽教育機関の先生となります。それら先生は音楽家として、そして公務員として、納得感のある品質と価格のコンビネーションを求めることとなります。であるからこそ、既に品質の良いものを作っているKAWAIからすると、その認知を広めて、潜在的ユーザに価値を理解してもらうことにより、安易に価格勝負をせずに正面から勝負を挑める、費用対効果が高い市場であるとも言えるのです。

マーケティング上の施策としては、詳細な仕組みのご説明は控えられたものの、マーケティングエージェントと組み、ブランドストーリーを差し込むべきペルソナを特定し、ターゲットマーケティングを行った上で、自社のウェブサイトの訪問アクセスを増やし、内容の濃いブランドストーリーと品質の中身を伝える等、昨年後半の半年をかけて行った一連の施策の効果が今年から徐々に顕在化しつつあるとのことです。潜在購買層はSNSを通じてKAWAIウェブサイトを訪問した上で、さらに関心を持った人々が、KAWAIの販売店(代理店)を訪れるまでを一つのサイクルとして管理しています。そのブランドストーリーは、提供する商品自体が本質的に良い場合に限り中長期の再現性に繋がり、ブランド認知がさらに深化することとなりますが、KAWAIの場合で言うと、2025年のショパンコンクールでの躍進が、言葉による脚色など必要なく本質的な良さを既に物語っていると言えるでしょう。

このように、KAWAIの今後の成長の鍵となる欧州市場は極めて競争が厳しく、プロユーザーの目線に叶う明快な価値基準、所謂バリュープロポジションの提示が求められます。今回の面談にて、その難しい市場においても、KAWAI十年の計の戦略の最前線であるデジタルマーケティング戦略の効果が着実に萌芽しつつあることをお伺いできたことは極めて有益でした。その成果が市場シェアの拡大、ブランド価値の向上、さらには利益の拡大と漸進的につながり、最終的にKAWAIの企業価値の拡大に寄与するものと私どもは感じております。

尚、前述のショパンコンクールでの採用率の拡大のみならず、KAWAIのウェブサイトのこちらに掲載されているスライド集「夢を受け継ぎ、世界が認める100年ブランド」は、控えめなナラティブではあるものの、当社のブランドが着実に世界のトップシーンに浸透していることを印象付けます。当スライド集のp.5を下図にピックアップしていますが、既に海外の名だたるホールや音楽大学に当社のShigeru KawaiやKawai GXブランド等のフルコンサート仕様のグランドピアノが納入されていることが示されています。

(出所:KAWAI HPより抜粋)

私どもは、当社の成長を応援する株主として、そして「親しくも、厳しい友人」として、引き続き当社の企業価値最大化のための建設的な対話を継続して参ります。

(過去の関連する投稿)
2026年6月15日 ー 河合楽器製作所 大量保有報告書提出について
2025年10月21日 - ショパン国際ピアノコンクールについての続報
2025年10月12日 ー 株式会社河合楽器製作所 CIO清水のコメント
2025年5月31日 ー 株式会社河合楽器製作所 中期経営計画についての意見交換
2025年4月10日ー株式会社河合楽器製作所 東洋経済新報社記事について
2025年3月23日 ー 株式会社河合楽器製作所 中期経営計画コメント
2024年12月4日 ー 株式会社河合楽器製作所 ディスカッションについて
2024年6月8日 ー 株式会社河合楽器製作所 ディスカッションについて
2024年1月14日 ー 株式会社河合楽器製作所 企業価値向上に向けた取組みのご紹介
2023年9月4日 ー 株式会社河合楽器製作所 エンゲージメント アップデート動画について
2023年8月23日 ー 株式会社河合楽器製作所 ディスカッションについて
2023年6月27日 ー 株式会社河合楽器製作所 株主総会について
2023年6月11日 ー 株式会社河合楽器製作所 フォローアップ エンゲージメントのご紹介動画について
2023年5月18日 ー 株式会社河合楽器製作所 エンゲージメント説明動画について
2023年5月8日 ー 株式会社河合楽器製作所 書簡の送付について


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